【ブログ】衛星データを活用した変位解析 ④:各業界のユースケースの紹介
皆さんはじめまして、スペースシフトの事業開発部の永作です。 前回までは、可視化ツールTRE Mapsのご紹介と、その可視化機能を使った変位解析結果の時系列表示や複数地点の傾向を確認する方法についてご紹介しました。 第4回では、衛星データを活用した変位解析のユースケースを、業界ごとに紹介します。その前に、利用されるイメージをつかみやすくするために、国内の自治体での導入事例についてご紹介します。
日本国内では、都市圏やその近隣に立地する工業地帯の工場では工業用水として地下水を汲み上げていることから地盤沈下の進行が問題になっています。最近は、地下水採取規制が整備されているので、抑制されつつありますが、過去に沈下した地盤を元の位置に戻すのはかなり難しいです。このため、自治体では定期的に水準測量を実施して地盤変位を監視しています。しかし、水準測量は、測量地点のみの変位情報しか得られず解析点が少ないことや、実施するのに多大な人員と費用がかかっています。そこで、多くの解析点が得られて面的に変位状況の把握ができる、且つ人員や費用の削減ができるとして、衛星を活用した変位解析の導入が進められています。 今回はこのような変位解析サービスが活用できるユースケースをまとめてご紹介できればと思います。
前述した自治体のように、「地盤や建築物の変位を効率的に把握したい」というニーズはよく聞きますが、どのようなユースケースがあるのでしょうか。業界軸と利用シーン軸でユースケースを整理しましたのでご覧ください。
代表的なユースケースを以下でご説明いたします。
計画・事前調査
ビルなどの建築物やトンネルなどの社会基盤施設の計画及び事前調査では、候補地や予定地の地盤状況を確認することが不可欠です。しかし、受注前での立ち入りが難しく、現地の状況を把握するのが難しい場合や、過去の地盤沈下を確認する手段が限られている場合があります。こうした課題に対処するために、衛星データを活用した変位解析が有用です。これにより、調査対象地点に出向くことなく、且つ、過去のデータを遡って変位情報の確認をすることが可能です。
工事・対策
高層ビルや社会基盤、プラント、港湾などの建築や建設が進むと、周辺の地盤や構造物の影響を確認するため、定期的なモニタリングが不可欠になります。地下水位が高い場合には、揚水や薬液注入を実施するなど地盤改良を行うこともあります。これまでは水準測量を行い、高い精度で変位のモニタリングをしていましたが、観測すべき地点が多く必要であり、交通の多いエリアでは測量が困難な場合があります。しかし、衛星データを活用した変位解析は、観測点を設けないため、現地に出向く必要がありません。こうして、交通量にも左右されずに地盤の変位解析を行い、効率的に変位状況を監視できます。
維持・管理
工事や地盤改良対策が完了すると、実際の運用が始まり、数十年にわたり維持管理が行われることがあります。この段階では、施設内設備の日常点検なども重要ですが、同時に敷地内の地盤や構造物の変状を把握する必要があるため、地盤の沈下や隆起を定期的にモニタリングする必要があります。具体的には、鉄道会社では軌条周辺での地盤の隆起・沈下、水力発電所ではダムの擁壁の沈下、港湾ではコンテナ運搬車両や積荷自体の重さによる埋立地の沈下などが挙げられます。
また、自治体の視点からは治水のための堤防や鋼管などの構造物に変状がないか、水道管の漏水の可能性を探るために埋設地の変位を確認する必要があります。これらのユースケースについても、衛星データを活用した変位解析サービスで、地盤変位の定期的なモニタリングや過去の変位を確認することが可能となります。これによって、異常を早期に察知し、最小限の地盤沈下で留めるための対策を講じるなど、次のアクションにつなげることができます。
今回は、業界ごとの変位解析のユースケースをご紹介しました。どのようなシーンで衛星データを活用した変位解析の利用ができそうか、ご想像いただけたのではないでしょうか。次回は実際の導入事例を、変位解析サービスの使用方法とともにご紹介する予定です。
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- 記事作成者:永作 俊( 事業開発部 )