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【ブログ】斜面崩壊をいち早く検知するための新たな試み:SAR衛星データとAIの融合

技術事業部の元村です。今回は、衛星データとAI解析技術による斜面崩壊域検知についてご紹介いたします。 

斜面崩壊の脅威

日本各地で発生する地震や大雨は、しばしば山の斜面を崩壊させ土砂崩れ等の大きな被害をもたらします。特に令和6年の能登半島地震や平成30年の北海道胆振東部地震では、多くの土砂崩れによる斜面崩壊が発生し、住宅や道路に甚大な影響を与えました。物資輸送ルートの把握などのため災害発生直後には、迅速かつ広範囲に被害状況を把握することが求められますが、その把握を行うことは容易ではありません。

 

スペースシフトの土砂崩落域検知AIモデル

弊社が得意とするSAR(Synthetic Aperture Radar, 合成開口レーダー)衛星は、天候や昼夜問わず広範囲の地表面を観測できるため、こうした災害時の被害把握に非常に有効です。しかしSARデータの取扱いには高度な専門知識が必要なだけでなく、専門家であっても斜面崩壊域を判読(データを目で確認して斜面崩壊域を特定)して検出することは非常に困難で、更にSARが観測可能な広域の判読となると非常に時間を要します。

弊社ではこれらの課題に取り組むため、人工衛星データ用の斜面崩壊域を自動検出するAI(人工知能)モデル(アルゴリズム)の開発に取り組んでまいりました。

弊社の斜面崩壊域検知モデルは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が運用するSAR衛星「ALOS-2(だいち2号)」や後継機「ALOS-4(だいち4号)」をはじめとする多数のSAR衛星に対応できるよう開発を進めており、衛星データプロバイダによらず様々な衛星データを柔軟に活用することを想定しています。

 

土砂崩落域検知AIモデル解析例

以下の画像は、弊社のAIモデルが令和6年の能登半島地震における斜面崩壊域を弊社AIモデルで検出した結果例です。

斜面崩落検知モデルの例(スペースシフト作成)

 

 

左側の画像はSAR衛星「ALOS-2」が観測した元データと、国土地理院が航空写真から斜面崩壊域を判読で解析した結果を赤で示しています。右側の画像は弊社のAIモデルが解析した結果を赤で示したものです。 

この解析結果から比較的大規模な斜面崩壊箇所が正確に検出されていることが確認できます。このように超広域の斜面崩壊被害を瞬時に把握できる方法は衛星以外にはなく、弊社のモデルを用いることで、災害発生直後に迅速かつ広範囲の被害状況を把握することが可能です。 

一方で、山の谷底部分や急斜面、海岸隆起エリア等において誤検出や検出漏れが発生することを確認しています。これらは、SARの観測条件により発生するレーダーシャドウ等の影響を受けた部分とみられ、弊社ではこれらの課題を克服するための研究開発も進めています。 

 

今後の展望

斜面崩壊域の早期検知は、活用可能な支援ルートの把握など、災害対応において命を守るための重要な要素です。特に南海トラフ等の超広域災害発生時には、全体を俯瞰で把握する手段は限られており、衛星データの果たすべき役割は大きいと考えています。

加えて最近では、斜面崩壊域と同様に近年そのリスクが注目されている切盛土造成域の検出についても関心をお寄せいただいており、弊社が斜面崩壊域検知AIモデル開発で培った技術を応用して切盛土域を検知するモデルの研究開発も進めています。

今後も弊社技術が災害時の迅速な対応を支える革新的なツールとなることを目指し開発を進めて参ります。

 


 

弊社の技術を用いた取り組みや衛星データビジネスにご関心のある方は、ぜひ当社HPの お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

  • 記事作成者:元村(技術事業部)

 

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