【ブログ】衛星データを活用した変位解析 ⑥:変位解析の精度
皆さんこんにちは。スペースシフトセールスエンジニアの堤です。
これまでのブログで、変位解析がどういうものなのか、どう利用できるのかというイメージをご紹介してきました。おさらいしますと、この変位解析は、SAR衛星が定期的に取得するデータを蓄積し、それらを解析することで建物や地盤の変位状況を知ることができる技術です。
この変位解析のメリットは“過去に遡って”“広域に”“人の立ち入らない場所も”解析できるという点です。一方で、「現地の測量やセンサーに比べてどのくらい信用できるの?」というご質問をよくいただきます。この精度について、大きく2つの観点で今日はご紹介したいと思います。
1. 空間的な解像度
衛星データを活用した変位解析では、現地の測量などに比べて遥かに多くの解析点が得られます。その各点の位置の精度(その解析点が現実のどこを示しているのか)というのは、解析に使用する衛星の種類によって決まります。
上の図はスペースシフトの変位解析でよく使われるSAR衛星のイメージを並べたものです。解像度がおよそ10m前後の範囲でばらついているのがわかるかと思います。この解像度が、解析点の位置精度を決定します。
2. 変位方向の精度
次に、各解析点が持つ変位の精度ですが、スペースシフトの変位解析ではミリメートル単位での変位の解析が可能です。以下に変位解析の精度の概要を示します。
● 基準点に対する年間変位率の精度:± 1 mm/yr
● 単一の変位解析の精度:± 5 mm
この精度は様々な要因で精度が決まり、①-④はその例です。
① 処理画像数や撮像頻度:枚数が増えれば増えるほど精度が向上
② 信号のコヒーレンス性:植生や地表の乱れがないほど精度が向上
(コヒーレンスについては https://www.spcsft.com/news/blog-ja/843/ の記事でご紹介しています)
③ 大きな大気の変化:観測時の気象条件が極端に悪い場合精度が低下
④ 解析期間中の大きな地表変動:雪や洪水など地表面の変化が激しい場合は精度が低下
最後に、実際の事故の事例でどの程度の精度が得られているのかをご紹介したいと思います。下の図は2014年12月にアメリカ合衆国のシアトルで発生した陥没事故の事例です。この事例ではトンネル掘削機のトラブルにより地盤の陥没が発生しましたが、その際の現地測量と変位解析の比較が行われています。
AとBのグラフは陥没が発生した周辺での異なる計測地点の結果ですが、それぞれ緑で示した変位解析と、青で示した現地の測量結果がよく一致していることがわかります。縦軸の変位量はもちろんのこと、横軸が示す陥没のタイミングも正しく捉えています。もちろん衛星データによる変位解析の場合は撮像のタイミングに制限はあるものの、現地に赴かずともこのような変位を精度よく捉えることができるわけです。
次回以降の記事では、変位解析の他の事例などをご紹介していきたいと思います。
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- 記事作成者:堤 大陸( 事業開発部 )